シルクスクリーン 「パネル」と「スプレーのり」の重要性を解説!

シルクスクリーンの道具、「パネル」とその相棒「スプレーのり」!
パネルにスプレーのりを吹きかけて、プリントの中敷きや下敷きとして使用するものです。
無くてもいいんじゃない?と思われそうな一見地味な道具ですが、実は大切な役割を果たしているのです!
今回は、これらの重要性と、パネルのセット方法に工夫が必要なシチュエーションについて解説をしていきます。
◎目次
・パネルとスプレーのりの役割
└ ① 布地などの被印刷物を固定させる
└ ② インクが染みこむのを防ぐ
└ ③ 段差を解消する
・シチュエーション別のパネルセット方法
└ 基本のセット方法
└ 紙
└ ランチバッグ
└ Tシャツの袖
└ Tシャツの首後ろ
→ プリント位置が段差に近いときの裏ワザ
└ フレームより小さい巾着袋
・商品はこちら!
・パネルとスプレーのりの役割
① 布地などの被印刷物を固定させる
のり付きのパネルを敷くことで、印刷物をしっかりと固定させることができます。
固定せずにプリントすると、スキージの圧力で布地がズレたり、しわの跡が付くことが。
また版を持ち上げる際に布地が張り付いてインクが剥がれてしまうことがあります。


こんな失敗を防ぐためには、パネルだけではなくのりで固定することが大切です!
ちなみにポリエステル100%の生地は、生地自体の伸縮性が高くスキージの圧力で伸びやすい上に
のりが剝がれやすいので、しっかりめにのりを吹きかけることをオススメします。
② インクが染みこむのを防ぐ
薄手の生地は、パネルを入れずにプリントすると、反対側にまでインクが染みてしまうことが。

せっかくきれいにプリントできても、裏に染みていたらショックですよね(泣)
パネルには染みを防ぐ「下敷き」的な効果もあるのです!
③ 段差を解消する
マチなどの段差を解消し、プリント面をフラットにする役割もあります。
シルクスクリーンでは、プリント面がフラットであること、かつ被印刷物と版が平行であることが大切です。

・シチュエーション別のパネルセット方法
基本のセット方法
図案サイズ、素材に合ったサイズのパネルを用意し、表面に軽くスプレーのりを吹きかけます。
※作業台や壁にかかるとベタベタします。気になる方は新聞紙などを敷いてからスプレーしてください。

プリントしたい位置にパネルを直に敷き、しっかりと密着させます。


これで完成です!
Tシャツ、マチが無いトートバッグなど、フレームよりも大きく段差がないものに刷る場合は
この基本セット方法でOK。
紙
パネルに直接貼り付けてしまうと、紙が剥がしづらく、剥がす際に角がダメージを与えるリスクが…。
紙の場合は、厚紙をパネルとして代用するのがオススメです。
厚紙に軽~くスプレーのりを吹きかけて、紙を置いてプリントしましょう!

ランチバッグ
マチの存在感が大きいもの代表格(!?)、ランチバッグ。
パネル一枚では凹みが解消しきれないんですよね…!

少し工夫をして、フラット面をつくりましょう!
底の型に合わせて切った厚紙を6枚と、マチの段差を相殺するための厚紙を3枚用意しました。
マチの段差を埋めるように、厚紙を重ねてバッグにイン!



段差が消えプリント面がフラットになり、刷りやすくなりました◎
Tシャツの袖
袖の幅に合ったパネルを用意しましょう。
今回は「布用パネル(Tシャツくん・ガリ版兼用)」を使いました。
ここで気を付けてほしいことが!
Tシャツの袖の裏には、縫い目があることが多いと思います。
パネルを1枚入れるだけだと、縫い目が当たる中央部分が盛り上がって、その両サイドが凹んでいる、という状態。触るとよくわかりますよ。

そこで、縫い目を両側から挟むようにパネルをセットしてみました!

計3枚のパネルを使用

これで、しっかりと平坦な面が作れました◎一見まっすぐでも触ってみると斜めになっている。。。
ということはよくあるので、プリント前には触ってチェックしてみてくださいね。
Tシャツの首後ろ
ラベルを外に逃がして、首元の位置にパネルを入れます。
これでOKと思いきや、触ってみると表側の首元が開いているところが凹んで、斜めになっています。
これを解消するために、凹んでいるところに「シリコンパッド」を当てて高さを出しました!

シリコンパットを当てて高さを出します

< プリント位置が段差に近いときの裏ワザ>
ここでひとつ、裏ワザをご紹介。
Tシャツの首後ろのように〈 プリント位置近くに段差がある〉ときは
製版時に図案の配置を工夫するのがオススメ!
版の中央に図案を配置していると、どうしてもフレームが首元の段差に当たってしまいますよね。
しかもフレームの一部がTシャツからはみ出てるので手元も不安定になります。

こういうときは、製版の際にあらかじめプリントのシミュレーションをして
図案の配置を工夫してみましょう!
今回のケースでは、図案を上の方に配置して製版すると、リブの段差を避けることができ
フレーム全体がTシャツの上に収まるのでだいぶ刷りやすくなります◎

刷る位置が決まっているときは、あらかじめプリント時のシミュレーションをして製版の配置を組んでみてくださいね!
フレームより小さい巾着袋
小さな巾着袋は、紐を通す部分にフレームが当たってしまうので難しいですよね。

紐に当たり斜めになってしまいます…
そこで、紐部分を逃がすように巾着袋の下に「シリコンパッド」をカットして、4層にして敷いてみました!
巾着の中にも厚紙を入れて、完成。

作業台が安定していれば、台の外に逃がしてしまうのもいいかもしれません。
※ただしスキージの力を入れたときに安定しない環境では、危ないので避けてください。

チャック付きのポーチなども同じ方法が応用できます。
また、小さめの巾着やポーチのように、フレームよりも小さく段差があるアイテムの場合は
「Tシャツの首元」でご紹介した裏ワザと同様、製版時に図案の配置を工夫するのもオススメですよ!
・商品はこちら!

【 多色ハンガーパネルLL 5枚入/25枚入 】
Tシャツくんワイド印刷機用パネル。
印刷位置の目安となるスケールが印刷されています。
ハンガータイプなので、そのまま吊り下げての自然乾燥が可能です。
ワイド印刷機をお持ちでない場合も、Tシャツの多枚数印刷の際に便利です。

【 Tシャツくんプリントパネル(3枚入)】
印刷位置の目安となるスケールが印刷されたTシャツくん用印刷パネルです。
大きめサイズのトートバッグなどにも使用できます。

【 Tシャツくん ワンポイントパネル 】
シャツの袖など、狭い箇所に使えるプリント用パネルです。
小回りの利くサイズなので、細身のポーチや巾着袋にも使えます。

【 布用パネル(Tシャツくん・ガリ版兼用)】
シルクスクリーン印刷、ガリ版印刷をする際に使用するプリントパネル。
Tシャツくんジュニアに付属しているパネルと同じサイズです。
小回りの利くサイズなので、Tシャツの袖、小さい巾着袋、ワンポイントにマルチに使えます。

【 シリコンパッド A3 】
昇華プリントの際に密着度を高めるためのアイテムですがシルクスクリーンのマットとしても代用可能。
厚みがあるので、段差がおおきいときの高さ出しにも。
カッター等で容易にカットできます。

【 Tシャツくん スプレーのり 80ml / 430ml 】
製版時の原稿用紙の貼り付けや、布地などをパネルに固定するときなどに使用します。
大容量用の430mlと、コンパクトな80mlの2種類をラインナップ。
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シルクスクリーンによる挿絵 草間彌生×不思議の国のアリス
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シルクスクリーン 厚手の帆布生地にきれいにプリントする4つのコツ!
シルクスクリーンプリントの中でも難易度高め?!な、帆布生地(キャンバス地)へのプリント。 生地が堅く水分を通しにくい性質があるため、手刷りプリントはカスレやすいという難点があります。苦戦される方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、帆布生地にきれいにプリントする方法を実験形式で伝授いたします! ポイントは ①「段差」をなくす②「スキージ」を変えてみる③「メッシュ」を変えてみる④ “浮き”をつくる の4つ。それではいってみましょう~! ◎目次・実験で使った帆布生地①「段差」をなくす②「スキージ」を変えてみる┗ (1) 標準スキージ┗ (2) ウレタンスキージ③「メッシュ」を変えてみる┗ (1) 120メッシュ、80メッシュでテスト┗ (2) 80メッシュの注意点④“浮き”をつくる・まとめ 実験で使った帆布生地 実験で使用した8号の帆布カットクロス 実験では、8号の帆布生地(カットクロス)を使用しました。 帆布には1号~11号までの号数があり、号数が小さいほど「厚い」生地となります。 今回使用した8号はハリがあり型崩れしにくいタイプです。 ①「段差」をなくす 印刷面の段差をなくし、フラットな状態に保つことはとても大切なポイントです!段差・凹凸差があると、印刷ムラやカスレの原因に。特に帆布生地は段差が厚くなりがちなので注意が必要です。 NG:段差やしわがある状態 OK:フラットな状態 段差がある位置に印刷したい場合、中敷きを使って段差を解消しましょう。下の画像では、トートバッグの底マチの形に合わせてパネル1枚と厚紙をマチの厚み分重ねて、中敷きを作りました。こうすることで、凹凸を解消しフラットな面を作ることができます。 底マチの形に合わせて中敷きを作りました 凹み部分が底マチの段差を解消します。 ②「スキージ」を変えてみる スキージを変えることでも仕上がりに違いが出ます。 それぞれのスキージの特長と選び方については、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。 https://www.hando-horizon.com/labo/10361 通常、厚手生地へのプリントは「ウレタンスキージ」をオススメしていますが、帆布の場合はどうでしょうか?標準スキージとウレタンスキージで、実際に刷ってみました! (1) 標準スキージ 標準スキージは、プラスチック素材でできていて、低価格で購入できるのが魅力。初心者でも扱いやすい一方で、堅い素材や厚い生地へのプリントは難しい場合があります。厚手帆布生地はどうでしょうか?1回刷り、2回刷りの仕上がりを見てみましょう! 【標準スキージ】1回刷り:全体 【標準スキージ】2回刷り:全体 【標準スキージ】1回刷りは擦れが!:拡大 【標準スキージ】こちらも1回刷りは擦れ:拡大 1回刷りでは全体的にカスレが発生してしましました!!特にベタのデザインは広範囲にカスレていて、目立っています。標準スキージの場合は「2回刷り」がよさそうです◎ (2) ウレタンスキージ 続いて、ウレタンゴムでできたウレタンスキージでテスト。やや上級者向けのスキージですが、パワーはピカイチ。ゴムに弾力があるので、堅く厚い素材にも相性がいいです。こちらも、1回刷り、2回刷りをそれぞれ見てみましょう。 【ウレタンスキージ】1回刷り:全体 【ウレタンスキージ】2回刷り:全体 【ウレタンスキージ】1回刷りできれいに:拡大 【ウレタンスキージ】2回刷りは線が太りました:拡大 1回刷りでも問題なく、とてもキレイに刷れました! 2回刷りは線が太ったり抜き部分が潰れ気味になったりするので、ウレタンスキージを使う場合は1回刷りが良さそうです。 【結論】・ 標準スキージ:1回だと擦れる。2回刷りがオススメ。・ ウレタンスキージ:1回刷りで十分な仕上がり◎2回刷りは若干デザインが潰れるかも。 ③メッシュを変えてみる Tシャツくんのスクリーンは、120メッシュ80メッシュ60メッシュ230メッシュの4種類を扱っています。 120メッシュを標準スクリーンとご案内していますが、インクが染みこみづらい厚手の生地へのプリントは網目が大きい80メッシュをオススメします。 メッシュの違いと選び方はこちらの記事で解説しています! https://www.hando-horizon.com/labo/4276 帆布生地の場合、メッシュの違いでどのような差が出るか実験してみました! (1) 120メッシュ、80メッシュでテスト ウレタンスキージを使って、それぞれ1回刷りした結果がこちら。 120メッシュで1回刷り 80メッシュで1回刷り 一見どちらもキレイにプリント出来ているように見えますが、120メッシュの方をよく見てみると… 120メッシュ1回刷り 拡大① 120メッシュ1回刷り 拡大② 部分的にカスレているのがわかります。 一方80メッシュは、カスレやムラなく均一に仕上がりました。 (2) 80メッシュの注意点 80メッシュは網目が大きいため、デザインによってはエッジのがたつきが出てしまうことがあります。(特に紙のように滑らかな素材は目立ちます。)基本的には、シンプルで大きい図案が適しています。 ただし、厚手の帆布のように表面の凹凸が粗いとそこまでがたつきが目立たずインクもしっかりと塗布できるため、80メッシュがオススメです。 80メッシュでもがたつきは目立ちません 【結論】厚手の帆布生地には80メッシュがオススメ。120メッシュは部分的にカスレてしまうかも。 ④“浮き”をつくる “浮き”とは、印刷したい素材と版の隙間(3mm程度)のこと。 シルクスクリーンにおいて“浮き”は非常に重要で、きれいな印刷には欠かせないポイントです。 “浮き”があることにより、スキージが通過した後に版が印刷素材から離れ(これを「版離れ」と言います)、その反発力でインクを均一に引き上げ、美しい印刷面になります。たかが3mm、されど3mm! たとえば帆布のお弁当バッグ。版のフレームよりもサイズが小さく厚みもあるので、版と素材がべったりと密着してしまいますよね。 浮きがなく、版と印刷する素材が密着している状態 このような場合には、フレームの四隅に厚紙などを敷いて適度な高さを作ってみましょう!素材と版の間に“浮き”が生まれ、刷りやすくなります。下の画像では、コルク素材のコースターを使いました。 フレームの四隅にコースターを置いて高さを出しました まとめ いかがでしたでしょうか?上記4つのコツをいずれか実践いただくだけでも、キレイなプリントが期待できますよ!ぜひ参考にしてみてくださいね。 ◆ご紹介した商品・80メッシュ、120メッシュ商品を見る ・スキージ各種商品を見る HANDoでは、シルクスクリーンを通してものつくりやみなさまの新しい一歩のサポートをしています。 シルクスクリーンのワークショップを運営してみたい!イベントでシルクスクリーンをやってみたい! など、シルクスクリーンにご興味をお持ちでしたら、ぜひ一度HANDoへご相談ください。 シルクスクリーンのお役立ち情報「ものつくりLABO」やイベントレポートも随時更新しています。 > 「ものつくりLABO」記事一覧 > イベントレポート一覧 > お問い合わせフォーム