ラボ

LABO        
2024.2.19

Tシャツくん 細い線、小さい文字、どこまで再現できる?【印刷編】

Tシャツくん 細い線、小さい文字、どこまで再現できる?【製版編】の記事につづく第二弾!
今回はプリント編です。

製版編の実験では、
1pt未満の細い線、および明朝体の文字は、そもそもTシャツくんでは製版が難しい
ということがわかりました。

製版編はこちら

さらに、製版できたからと言ってきれいにプリントができるとは限りません。

快適にシルクスクリーンを楽しむには、実寸1㎜以上(データの場合は線幅3pt以上)を推奨しています。

なぜ実寸1㎜以上が推奨なの?

シルクスクリーンは、版の孔(あな)にインクを通すことでプリントする仕組み。

細かいデザインはその分版の孔も狭くなります。
そうすると、インクが十分に落ちず印刷面がカスレたり、
インクが孔をふさいで乾燥し目づまりを起こす原因となってしまうのです。

とは言え、できるだけ細かい線で表現したい…!ということもあると思います。

そこで今回は、Tシャツくんで製版した細い線や小さい文字はどこまでプリントできるのか、
実験を通して検証していきます。

実験ではこちらの図案を使いました。

今回使用した図案

◎目次
① 素材別
・紙(クラフト紙)
・布(綿100%薄手)
・厚手コットン地
② 何枚まで連続プリントできる?
・プレーンインクで実験
・リッチインク「きん」で実験
③ まとめ

① 素材別

それぞれ
・標準スキージ1回刷り
・120メッシュ
・プレーンインク
でプリントしてみました。

※実寸1㎜=2.83pt

【紙(クラフト紙)】

・線
黒線も白抜き線もくっきりとプリントすることができました。

・文字
14ptはキレイに出ました!12pt以下は、若干潰れたりカスれたり。
特に白抜き文字は、 クラフト紙の繊維にインクが滲んで潰れてしまいました。

クラフト紙にプリント

【布(綿100%薄手)】

・線
黒線、白抜き線どちらも細かい線までしっかりと出ています。

・文字
シャープにプリントできました!
ただし、目の粗い生地の場合は生地の繊維にインクが滲んで読みづらくなる可能性がありますのでご注意ください。
12pt以下は読めなくはないですが、許容範囲か否か見極める必要がありそう。
14ptは安定しています◎

薄手の布にプリント

【厚手コットン地】

ベタ面がカスレてしまったのは置いといて…(そもそも標準スキージは厚手コットンプリントは苦手!)

・線
1ptの線はよく見るとムラがあります。
1.5pt以上の線はくっきりとプリントできました!

・文字
どれもだいぶ怪しいですね…。
ただでさえカスレが出やすいので、14ptでも完璧とは言えない仕上がりです。

厚手コットン地は、細いデザインをキレイにプリントするのは難易度が高そうです。

厚手コットンにプリント

何枚まで連続プリントできる?

さて、上記はすべて1刷り目のサンプルでした。
1刷り目はスクリーンがキレイな状態なので、プリントも成功しやすいのです。
2回目3回目…と刷っていくと、徐々にインクが乾いて目づまりが発生してきます。
そこで次は、版の掃除なしで何枚まで連続プリントができるのか実験をしてみました。

※注意点※
実験は事前準備や加湿器のセット、エアコンの向きを調整した環境で行いました。
次のプリントまでにかかる時間や部屋の湿度によって乾燥の速度が変わりますので、ご注意ください!

・プレーンインクで実験

Tシャツくんシリーズのスタンダード〈プレーンインク〉は、乾燥速度を遅らせているので
水性インクでありながら目づまりしにくく扱いやすいインクです。

インクについて詳しくはこちらの記事をご参照ください!

【黒線】

正直、10刷りが限度かな…と予想していましたが、15刷り目もそこそこいい感じに!

意外にも長く持ちこたえてくれました。

16刷り目以降、2pt以下の線はカスレが目立ち始めましたが、この程度であれば版の掃除で回復できます。
※版の掃除方法はYouTube動画でもご紹介しています。

黒線実験

【白抜き線】

16刷り目でも安定していて、まだまだ刷り続けられちゃいそうです!

白抜き線実験

続いて文字の実験結果を見ていきましょう。

【黒文字】

文字自体の線が細すぎるのでインクが十分に落とせず、カスレてしまいます。
Tシャツくんで文字をプリントする場合は14pt以上にするかフォントを太くするのがオススメです。

黒文字実験

【白抜き文字】

なかなかイケてるのではないでしょうか?!
上の黒文字よりも可読性はいい気がします。

よく見ると画数の多い文字は潰れているので、黒線同様フォントのサイズや
太さを調整した方が、よりキレイなプリントになるはず。

白抜き文字実験

・リッチインク「きん」で実験

リッチインクの「きん」「ぎん」はインクの中にラメの細かい粒子が含まれているので
他の色に比べ目づまりしやすいインク。

そのため、「きん」「ぎん」を使用する場合は
なるべく大きいデザインで、スクリーンは80メッシュを推奨しています。

今回はプレーンインクと同じ条件で比較をするため120メッシュを使用しています。

【きん線】

1ptの線は1刷り目から怪しげ…。インクが十分に落ちていない様子。
3刷り目から早くもカスレが目立ち始め10刷り目でほぼプリントできなくなりました。

きん 線 実験

【白抜きの線】

先程の線に比べると、線の表現自体はくっきり出ています。
きんインクは、ベタ面は得意のようです!

しかし6刷り目以降発色がやや薄くなり、10刷り目では広範囲でカスレが目立ち始めました。
版の掃除をすれば、もう少し長く楽しめそうです。

きん 白抜き線 実験

【きん文字】

14ptでギリギリ…といったところですが、すぐにカスレてしまいました。
きんインクで細かい文字をプリントすること自体があまりオススメできません。

きん 文字 実験

【白抜き文字】

先程のきん文字に比べたら、意外にもキレイ?回数を重ねるうちにベタ面が薄くなる問題はありますが、早い段階で掃除をしていれば継続して刷ることができそうです。

潰れが気になる方は、フォントのサイズや太さを調整してみてくださいね。

きん 白抜き文字 実験

③まとめ

細い線、小さい文字のプリントは、

⇒インクが十分に落ちずカスれやすい

⇒白抜きは「にじみ」によって潰れやすい

という特性がおわかりいただけたかと思います。

シルクスクリーンの苦手とするデザインを上手に調整することでストレスなくプリントが楽しめるはず! 是非参考にしてくださいね。


HANDoでは、シルクスクリーンを通してものつくりやみなさまの新しい一歩のサポートをしています。

シルクスクリーンのワークショップを運営してみたい!
イベントでシルクスクリーンをやってみたい!

など、シルクスクリーンにご興味をお持ちでしたら、ぜひ一度HANDoへご相談ください。

シルクスクリーンのお役立ち情報「ものつくりLABO」やイベントレポートも随時更新しています。