シルクスクリーン”Tシャツくん”豆知識特集|コツやポイントのほか、意外な掃除や保管方法も。

手軽に自宅でシルクスクリーンが楽しめるキット「Tシャツくん」。
製版からプリントまで初めての方でも簡単にできることが特徴ですが、フレームや版をなんとなくそのまま保管していたり、とりあえず水洗いしていたりしませんか?
みなさんが普通にしていることでも案外道具を傷める原因となっている場合も…!
この記事では意外と知らないコツやポイント、お手入れ方法や保管方法についてまとめていきたいと思います。
(随時更新していますのでぜひぜひチェックしてみてくださいね!)
<目次> ※2023年5月24日更新
コツ・ポイント編
①ハケは垂直に!|ピンホール(小さな穴)がぽつぽつ開いてしまう時
②原稿は真っ黒に!|こすっても絵柄がなかなか出てこない時
③スクリーンを張るときは「空気の通り道」をつくる
④ブラッシングの時は平行に!|フレーム内に水を入れない
⑤Tシャツくんインクは混色OK!
⑥スクリーンを張り直すときはネジ穴を塞ぐ
お手入れ・お掃除方法編
①フレームからスクリーンが取れない!|紫色の液、ベタベタになってない?
②スキージやヘラについたインクのお掃除も大事
③油性インクのお手入れは水ではダメ
④パネルの掃除にはのり落としクリーナー!
⑤水道でじゃぶじゃぶ洗いは禁止|スクリーンの目詰まり
⑥Tシャツくん本体のガラス面、汚れてない?
保管方法編
①フレームのネジは緩めよう|歪みの原因に!
②スクリーンは涼しい場所に|夏の車内は厳禁!
コツ・ポイント編
①ハケは垂直に!|ピンホール(小さな穴)がぽつぽつ開いてしまう時
製版の後、絵柄以外のところにぽつぽつと小さな穴が開いていることはありませんか?
その穴は「ピンホール」と呼ばれるもので、「ブラッシングのしすぎ」「ハケを垂直にもっていない」ことが主な原因です。
動画のように「ハケを垂直に持ち」「くるくると円を描くようにこする」のがポイント!
ハケを斜めにするとガシガシと毛が刺さりピンホールの原因に…
また、長時間のブラッシングもピンホールや絵柄以外が崩れる原因となります。
どうしても絵柄が出にくい、たくさんこすらないと絵柄が出てこない!という方は「デザインの黒さ」に原因があるかも?
ということで次はデザインづくりのポイントです!
②原稿は真っ黒に!|こすっても絵柄がなかなか出てこない時
長時間こするとピンホールの原因に!?でもそんなにすぐ絵柄出ないよ…たくさんこすらないとなかなか出てこない…という方は「デザインの黒さ」に原因があるかも。
「Tシャツくん」はUVライト(紫外線)でスクリーン(に塗ってある紫色の感光液)を硬化させます。
絵柄の部分だけライトが当たらないようにすることで版が完成するのです!
では、紫外線を一番防ぐ色はというと…やっぱり「黒」!

この黒は濃ければ濃いほど紫外線を防ぐことができるので、デザインはどこからどう見ても黒、とにかく真っ黒!に作ることがポイント。
illustratorやPhotoshopなどをお使いの方はK100%もしくはリッチブラックに、手描きの方は油性マジックペンで塗りつぶし、光に透かしたときに向こうが透けないくらい真っ黒にすると◎

また、デザインを印刷するときは必ず専用原稿用紙を使いましょう。
なんとなく普通のコピー用紙でもいけそうじゃない?と思いがちなのですが、見た目では分からない「紫外線を通す量の違い」が大きな影響を及ぼすのです…(私も節約節約♪と家にあった紙しかもリサイクル用紙を使ってしまい失敗した一人です…)
ちなみに
インクジェットプリンターでプリントする方は「インクジェット専用原稿用紙」を、
トナー・レーザープリンター(コピー機)でプリントする方、手描きの方は「手描き・コピー専用原稿用紙」をお使いくださいね。
③スクリーンを張るときは「空気の通り道」をつくる

フレームにスクリーンを張るとき、机にベタ置きしている方…実は多いのではないでしょうか。
でも実はそれ、スクリーンをピンと張れない原因かも!
フレームを机に置くときはまず内枠(下側の枠)を少しだけはみ出して置きましょう。
そこへスクリーンを乗せて外枠(上側の枠)をバシッとはめます。
そうすることで、空気が逃げる道ができ、ピンと張ることができるのです!
これをしないまま普通に机の上で張ると、たわんたわん、だるんだるんになってしまうことも多いのでぜひ注意していただきたいポイントです◎
④ブラッシングの時は平行に!|フレーム内に水を入れない

ブラッシングをするときはとにかくフレームを濡らさないことがポイント。
フレームの間に挟まっているスクリーンは紫外線が当たっていません。
ということは…まだ感光液が水に溶けてしまう可能性がある!
できるだけ平行に持ち、絵柄だけを濡らすように心がけましょう。
フレーム内が濡れてしまうと、プリントしている時に、思わぬところが紫色の液で汚れてしまったり、最後にスクリーンを取る時に大変面倒な事態に…
⑤Tシャツくんインクは混色OK!

Tシャツくんのインクは同じ種類同士なら色混ぜができます!
(リッチ同士、プレーン同士…など、水性油性ともに同じ種類のインクに限ります。)
同じ種類以外を混ぜてしまうと各インクの特性が失われてしまう場合があるので、必ず同じ種類同士で混ぜましょう。
オリジナルの色に名前をつけてみるのも面白いですよ♪
⑥スクリーンを張り直すときはネジ穴を塞ぐ


フレームから一度外したスクリーンをもう一度使いたいときは、ネジであいてしまった穴をマスキングテープで塞ぎましょう。
これをしないとスクリーンの張りが弱くなってしまい、うまくプリントできない場合があります。
(どんどん穴が大きくなってだるんだるんになってしまいます!)
二度目、三度目、と張り直したいときは、マスキングテープをはがして、再度新しいマスキングテープで穴を塞ぎましょう。
お手入れ・お掃除方法編
①フレームからスクリーンが取れない!|紫色の液、ベタベタになってない?
フレームからスクリーンを外すとき、なかなか取れない時はありませんか?
べりべりっと剥がすようにしてスクリーンを取っているという方は要注意!
ブラッシングの際にフレーム内に水が流れ込んで、中で感光液が溶けているかも。

こんなふうにならないためには、先ほどご紹介したコツの④ブラッシングの時は平行に!|フレーム内に水を入れないことが大事なのですが、水が入ってしまった…!という場合は気づいたらすぐに「お湯で洗う」ことで綺麗に落とすことができます!
紫色の液は紫外線で硬化するので、スクリーンを外してすぐであれば簡単に落ちます◎
ただ、太陽の当たる窓の近くに置いていたり、もうかなり前についてしまったものに関しては残念ながら落とすことができません。
使用するのに問題はありませんが、ツールは綺麗に使っていきたい!という方はブラッシングの時に気を付けてみましょう。
②スキージやヘラについたインクのお掃除も大事


スキージやヘラについてしまうインク。
綺麗に取っておかないと、次の色に混ざってしまった!なんてことも。
水性インクはお水でお手入れができるので、使った後は洗ってしまいましょう。
大事に使って道具は長持ちさせましょうね♪
③油性インクのお手入れは水ではダメ

水性インクを使った後はスキージもフレームも水洗いでOK。
でも、油性インクの場合は水洗い厳禁!
油性インクとマルチインクには「ふきとり&うすめ液」、
ナイロンインクには「ナイロンインク専用溶液」を使ってのお手入れが必要。
スキージやヘラ、フレームなどについたインクの拭き取りのほか、まだ使用するスクリーンの場合はスクリーン上のインクのお掃除にもこれらを使用します。
④パネルの掃除にはのり落としクリーナー!

Tシャツくんのパネル…こんなふうにTシャツの繊維やインク写りで汚れてしまったりしませんか?
スプレーのりを吹き付けるためどうしても繊維がくっついてしまったり、薄い生地に印刷した際にはパネルにまでインクが写ってしまった…!なんてことも。
そんなときは…

市販ののり落としクリーナーがおすすめ!
ふきとり&うすめ液をお持ちの方はもちろんそれでもOKですが、ちょっと溶剤っぽいにおいが苦手…という方はぜひシール落とし、のり落としクリーナーを使ってみてください。

オレンジのような柑橘の香りなので使いやすく、汚れもピカピカに!
最後は水拭きと乾拭きもして、印刷するTシャツなどに香りが移らないようにしましょうね。
⑤水道でじゃぶじゃぶ洗いは禁止|スクリーンの目詰まり

Tシャツくんのスクリーン、フレームに張ったまま水道でじゃぶじゃぶ洗っている方いませんか?
それダメ、ぜったい!
フレーム内に水を入れてしまうとどうなるか…は④ブラッシングの時は平行に!|フレーム内に水を入れないで説明しましたね。
ということはもちろん水で洗うのもダメ。
プリント中に目詰まりが気になってきたときはスクリーンの裏面(インクを乗せない面)から濡れたティッシュでゴシゴシと拭きましょう。そのあと乾いたティッシュで拭いて軽く乾かせばOK!
Tシャツくんの正しいお手入れ方法は動画の後半でも説明しています!
また、目詰まりしにくいインクとしてプレーンタイプやソフトタイプも2022年9月より新たなラインナップとして登場しています!あわせてチェックしてみてくださいね。
⑥Tシャツくん本体のガラス面、汚れてない?

意外と見落としがちなのがTシャツくん本体のガラス面。
製版したときに、デザイン以外の箇所に穴があいてしまったりする方は要チェック!
インクや糸くずなど、小さなゴミが露光に影響を及ぼしてしまうことも。
ガラス面は定期的にきれいに拭いておくのがおすすめですよ。
保管方法編
①フレームのネジは緩めよう|歪みの原因に!

すぐに使うから、とスクリーンを張ったまま保管している方もいるはず。
スクリーンを張ったままでももちろんOKですが、正しい方法で保管しないとフレームが歪む原因に。
Tシャツくんのフレームはピンと、テンションが高く張れるような特殊フレーム。
そのため、ギチギチにキツくスクリーンを張ったままにしておくと内枠が歪んでしまう可能性が…!
歪んでしまうと、次にスクリーンを張った時にシワができてしまうこともあるので、スクリーンを張ったままにするときは必ずネジを緩めて保管しましょう!
もしくは、一旦フレームから外し、クリアファイルなどに保管しておくのもおすすめです。
その場合はネジで開いた穴をマスキングテープで塞いでから使いましょう!
②スクリーンは涼しい場所に|夏の車内は厳禁!

Tシャツくんのスクリーン、みなさんどこに保管してますか?
車で買いに行ったまま、車内に忘れちゃった…!という方は要注意!
実はTシャツくんのスクリーンは高温多湿が苦手。
特に、スクリーンに塗られている感光液は長時間暑い場所に置いておくと劣化する危険性もあるんです。
夏場の窓の近くや、車内のように灼熱地獄となるような場所を避けての保管をおすすめします。
まとめ
Tシャツくんについての豆知識をまとめてみました。
随時更新中なのでぜひ保存してチェックしてみてくださいね!
・2023年5月24日更新
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シルクスクリーンによる挿絵 草間彌生×不思議の国のアリス
以前の記事でシルクスクリーンのアーティストとして紹介した草間彌生さん。今回はその草間彌生がアートワークを手掛けた本、「不思議の国のアリス」の紹介です。思わずジャケ買いして飾っておきたくなる程ステキな本の挿画は、シルクスクリーンで作られたもの。今話題の展示会「特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」でも展示されている本です。 ▼ 以前の記事はこちら https://www.hando-horizon.com/labo/5391 シルクスクリーンのアート作品 有名作家の紹介も ● 草間彌生 とは 草間彌生の作品 (https://www.hando-horizon.com/labo/5391) 前衛芸術家・小説家。アートにあまり詳しくない人でもドット(水玉模様)のカボチャはどこかで目にしたことがあると思います。 1950年代に渡米しネット・ペインティング、突然パフォーマンスを始めるハプニングや体験型インスタレーション等を行い「前衛の女王」と呼ばれました。2016年には文化勲章を受章。1929年生まれの草間氏は、現在も現役の日本を代表するアーティストです。 ● 草間 彌生 作品の特徴 幼いころから幻聴や幻覚に悩まされ、その世界観を描いていました。ドットや網目をはじめ同じモチーフを反復しているのが特徴的です。 ● 世界中で愛されている児童文学、不思議の国のアリス 「子供のときに読んだことがあるけど、どんな話だったか思い出せない」という人も多いのではないでしょうか?少女・アリスは時計を持ったウサギの後を追いかけて、不思議な世界へ。個性豊かなキャラクターたちと出会いながら冒険するファンタジーです。 ● 「不思議の国のアリス」原作は? 引用:https://alice.exhibit.jp/works/ アリス展 マッド・ハッターのお茶会でのアリス、『不思議の国のアリス』初刊行版本より、ジョン・テニエル画、1866年、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 © Victoria and Albert Museum, London ● 作者 ルイス・キャロル 本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。イギリス・オックスフォード大学の数学教授。 「不思議の国のアリス」の物語が生まれたきっかけは、彼の知人の子供たちと遊んでいるときに即興で話したことでした。 1865年に『不思議の国のアリス』(原題: Alice’s Adventures in Wonderland)初版刊行。続編は1871年に『鏡の国のアリス』(原題:Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)を発表しています。 ● 挿絵 ジョン・テニエル 当時イギリスで風刺画家として人気の絵師。「不思議の国のアリス」刊行にあたり作者のドジソンとレイアウトやイラストを綿密に計算し、現在でも愛されるアリスの世界観を作り上げています。当時の挿絵は木版画で作成されました。 ● 草間彌生 in ワンダーランド 『不思議の国のアリス With artwork by 草間彌生』(ルイス・キャロル 著、楠本君恵:訳/グラフィック社)引用:MoMA Design Store(https://www.momastore.jp/shop/g/g9784766124545/) 草間彌生が挿絵を担当した『不思議の国のアリス With artwork by 草間彌生』(初版2013年 ルイス・キャロル 著、楠本君恵:訳/グラフィック社)も、アリスの世界をテーマにした素晴らしい作品の一つ。もともとはイギリスの現代美術館『テート・モダン』での草間氏の個展に併せて企画・出版されたものだそうです。 ● アリスの世界観と草間 彌生の作品がぴったり マッドハッターを思わせる帽子(シルクスクリーン作品)/『不思議の国のアリス With artwork by 草間彌生』(ルイス・キャロル 著、楠本君恵:訳/グラフィック社) ワンダーランドの主役は草間彌生。アリス、ウサギ、チェシャ猫、芋虫やハッドハッター等のキャラクターそのものは描かれていません。それでもポップでカラフル、そしてサイケデリックな挿画は本文の幻想的なイメージとぴったり。 挿画はほとんどがシルクスクリーンで制作されたものだそう。色使いや反復するモチーフなど、草間彌生の作品をたっぷり堪能することができます。 声に出して読みたいタイポグラフィ/『不思議の国のアリス With artwork by 草間彌生』(初版2013年 ルイス・キャロル 著、楠本君恵:訳/グラフィック社) 本文は原作に沿った現代日本語訳です(原作冒頭の詩は省略)。遊び心のあるタイポグラフィもこの本の見どころ。内容に沿って文字が大きくなったり小さくなったりと変化するのが面白く、読み進めていくうちにどんどん不思議の国の世界へ引き込まれていきます。 本の装丁もステキです。このまま部屋に飾れます。(撮影:筆者) ● 大人も楽しめる絵本 大人になってから読む「不思議の国のアリス」は時代背景と風刺が理解できたり、キャラクターの噛み合わない会話を楽しんだりと、子供時代とはまた違ったおもしろさがあります。 豪華な挿絵もあるこちらの本は、草間彌生の絵が欲しいと思っている方にもおすすめ。プレゼントにしてもおしゃれですね。 ● 「不思議の国のアリス」の魅力とクリエイター 動くチェシャ猫のインスタレーション(撮影:筆者)特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―/森アーツセンターギャラリー(https://alice.exhibit.jp/about/) アリスが冒険するのはだれも行ったことのない不思議の国。インパクトの強いキャラクターが織りなす非現実的な物語は、様々なクリエーターにインスピレーションを与えます。 イラストや映画、舞台、ファッション等「不思議の国のアリス」がテーマとなっている作品も多く作られてきました。この記事で紹介している草間彌生の本も展示されていますよ。 ● 「不思議の国のアリス」展示会も大人気 今話題の『特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―』では「不思議の国のアリス」が生まれた時代背景や様々なジャンルのアリス約300点もの作品に触れることができます。没入型の展示&演出もあり、自分も不思議の国に迷い込んだようなワクワク感があります。 東京(2022年7月16日〜10月10日)―大阪(2022年12月10日〜2023年3月5日)と順に開催しているので、のぞいてみてはいかがでしょうか。 ケース内の右 草間彌生の本が展示されています(撮影 筆者)特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―/森アーツセンターギャラリー ● 「不思議の国のアリス」で創作意欲が湧いてきたら、シルクスクリーンを体験してみよう! 数々のクリエーターと同じように「不思議の国のアリス」からインスピレーションを得たら、ぜひオリジナル作品をつくってみませんか? ▼ シルクスクリーンの作り方に関する過去記事はこちらもおすすめ。 https://www.hando-horizon.com/labo/4506 シルクスクリーンとは?やり方や必要なもの、印刷手順や体験できる場所を紹介 https://www.hando-horizon.com/labo/4600 東京・吉祥寺でシルクスクリーン体験~手ぶらでできる体験コース&ワークショップ~ 「草間彌生のように、私も本が作りたい」という方に朗報です! 手作りで本を作れるオープンアトリエ型ワークショップART BOOK TRIAL 2022を開催中。詳細は下記のリンクよりご確認ください。 >> https://www.hando-horizon.com/info/6330/ 【参考サイト】 特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ― https://alice.exhibit.jp/about/ 草間彌生 美術館 https://yayoikusamamuseum.jp/